Life

変わらない幸せ

雨音とギャン泣きと、ちいさな背中

今日は、なんとも言えない静かな朝だった。

外は小雨。風もなく、街全体がふわっと白っぽいグレーに包まれているような、そんな朝。いつもなら散歩がてら、少し遠くのカフェまでコーヒーを買いに歩くのだけれど、今日はさすがに断念。コンビニまで車を出して、ホットのブレンドコーヒーをひとつ。

車の中で、ぼんやりとワイパーのリズムを聞きながら飲むコンビニコーヒーも、悪くなかった。むしろ、最近のコンビニコーヒーは下手なカフェよりずっとうまい。温かい紙カップを両手で包み込みながら、「今日もなんとかなるか」と思った。ほんの数分前までは、そう思っていた。

家に戻ると、留守番の一日が始まった。今日は妻が朝から用事で外出。2歳になる息子と、男二人きりの一日である。

こう書くと微笑ましく聞こえるかもしれないが、実際はそんなに甘くない。朝のうちはまだ機嫌が良かった息子も、昼前になると突然スイッチが入ったようにギャン泣きスタート。理由はわからない。お腹が空いたのか、眠いのか、それともただ何か気に食わなかったのか。とにかく泣く。声をかけても、抱き上げても、何をしてもダメな時はダメなのだ。

正直なところ、こっちの心も折れそうになる。

一人で見ていると、「ああ、妻はいつもこの状態を一人でやっているのか」と実感する。でもその一方で、じゃあそれをちゃんと感謝しているかというと、全然できていない自分にも気づいてしまって、なんだかやるせなくなる。息子は泣くし、自分は焦るし、イライラするし、でも怒れないし。

しかも、最近の妻は常に怒っているように見える。何をしても、どこか不満そうで、ちょっとした一言にも棘がある。

「そんな言い方しなくても……」と心の中で思うこともあるけれど、それを口に出すと大喧嘩になるのが目に見えているから、何も言えず、ぐっとこらえる日々。

こっちも人間だ。疲れるし、ストレスもたまる。けど、父親ってのは、こういうのを黙って飲み込んで「大人になる」ことを求められるのかもしれない。正直、しんどい。

そんなわけで、息子のギャン泣きに翻弄されながら、あっという間に夕方になった。

ちょっと気分転換をしたくて、「ガソリンでも入れてくる」と息子をチャイルドシートに乗せて、車で近所のスタンドへ。

いつものスタンド。窓を拭いてくれるお兄さんに軽く会釈をしながら、なんとなくコンビニコーナーに立ち寄った。そこで、ふと目に入ったのが菓子パンだった。チョコクリームがたっぷり入った、しっとり系のあれ。

完全に衝動的だった。「ああもう、今日はいいや」と思って、レジに持っていってしまった。

車の中で食べる、甘ったるいそのパンが、なんとも言えず沁みた。

全然健康的じゃないし、間食としては最悪の部類なのはわかっているけれど、それでも今日は許してほしいと思った。

ちょっと甘えたくなる日もある。誰にも気づかれない、小さな逃げ道が、時には救いになる。

パンを食べ終わって、ふと後ろを見ると、息子はすやすや眠っていた。泣き疲れたのだろう。小さな手を丸めて、口を少し開けて寝ている姿を見て、なんだかこっちまで泣きそうになった。

この小さな人を、ちゃんと守れているのか。不安と後悔と、ちょっとした愛しさが、胸の中でぐるぐる回っていた。

明日もまた、きっと何かに疲れて、悩んで、それでも朝は来る。

そうやって、父親として、夫として、少しずつ進んでいくしかないんだろうなと思う。

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